芽が出ている慈姑は、「芽でたい」ということで、いまでは縁起物とし
てお正月料理の定番となっています。ただ実際は、九月から春先まで収穫できるの
で、築地市場ではその季節には、いつも出まわっています。品種としては、青クワイ、白クワイ,吹田クワイなどにわかれていますが、私たちが目にするのは青
クワイがほとんどです。
でんぷんを主成分とする根菜類で、独特の歯ざわりが楽しめることもあっ
て、煮物や素揚げが好まれているようです。食通として名高い吉田健一は、「その歯
触りは栗に似てもっとしゃきしゃきしていて、(味の方は)芳しくて僅かに苦みがあって、それでどこか栗の甘みと言えそうなものもある」とその味を表現し、
「一度食べれば忘れられないもので、一時はこれさえあれば御馳走と思ったものだった」と『私の食物誌』に記しています。
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原産地は中国で、奈良時代にの頃には日本に伝えられましたが、一般に広
まったのは江戸時代に入ってからです。映画やテレビに登場する江戸の町医者は、髪
全体をのばして後ろで束ねた髪型をしていて、慈姑頭と呼ばれていますが、これなども江戸期に普及した証といえるでしょう。
名前については、葉の形が鍬のような芋だったからその名が付いたとか、
藺草(イグサ)に似ているので「食える藺」という意味からとったのだとか、諸説は
紛々となっています。お好みに合わせて使い分けるとよろしいのではないでしょうか。
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